昭和唱和ショー「扇風機付き電車」
先日の「挿しす世相史」の方で冷房車を扱いましたので、ここではそれ以前を扱ってみたいと思います。
その昔は勿論冷房なんか無く、夏場は窓を開けるだけでした。
しかしそれでも、走り出しさえすればかなりの風が入ってきましたし、今ほどの熱暑ではなかったので、通常の乗車では、さほどには苦痛ではありませんでした。
ただ、殺人的なラッシュだった満員通勤電車では、灼熱地獄だったようです。
それに、窓を開けると風が物凄いため、髪型が完璧に乱されるのも鬱陶しい事でした。
やがて、扇風機がドア付近の天井に設置されるようになります。これは昭和30年代からのようです。
これは首が回って広い範囲に届くようになっており(ごく初期は首が回らない形だったかも)、初期は乗客がその動作の入り切りを操作できました。
混んでいる電車ですとかなり暑かったので、この扇風機はそれなりに助かったのですが、首が回るから風が自分の所に来ない時間が結構ありました。
自分の所に風が来ると、束の間の極楽です。しかし、すぐに向こう側を向き始めるのが、なんとももどかしい思いでした。
窓を開けるには、両側に洗濯挟みのような形状の留め金部が有るので、それを両手で同時につまみながら上に引き揚げなければならなかったので、子供には不可能でした。
これが出来るようになった時と、吊革に届くようになった時が、自分の成長を誇らしく思う、電車での一瞬でした。
窓を開けた時のうるささと、あの猛烈な風は、当時を知る人にはすぐに思い起こされる鬱陶しい記憶でしょうが、そんな事も懐かしくなってしまうのですから、時というのは全てを和らげてくれるものです。