無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

昭和唱和ショー「氷屋」

Gさん(仮名)「今回は梅雨明けに相応しい題材ですね」

ごいんきょ「しかし、”氷屋”と言われると、かき氷を食べるお店と勘違いする人間が多そうだな、今は」

 

G「かき氷の元となる、氷そのものを売るお店ですよね」

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ご「そう。四角くて大きい氷の塊を売る店だな。医者とか魚屋とか相手に。昭和30年代までは各家庭に配達したりもしていたわけだが」

 

G「なんで家庭に配達したんでしょう」

ご「そりゃ、電気冷蔵庫が高嶺の花だった頃は、氷の冷気で冷やす冷蔵庫だったからだよ」

 

G「ああ、聞いた事あります。どのくらいの氷を使っていたんですかね」

ご「毎日、五貫匁(かんめ)くらいだったようだな。1貫匁は3.75kgって事なんで、20キロ足らずかい」

 

G「うひゃ~、毎日そんなに氷を必要としていたんですか、その冷蔵庫を使うと」

ご「だから、電気冷蔵庫ほどの高級品ではないと言っても、貧乏な家には無かったと思うよ」

 

G「でも、日本は空気と水はタダってくらいですから、氷そのものはそんなには高くなかったんでしょうね」

ご「べらぼうに高いってわけでもないけど、やはり毎日買うとなると結構な出費だよ。昭和30年頃で一貫匁30円くらいだったようだ。今の価値だと500円くらいなのかねえ。

  そして、料金を誤魔化す店が多かったらしい。一説には、氷屋の8割が誤魔化していたという話も有る」

 

G「誤魔化すって、どうやって?」

ご「そりゃ、重さを少なめにして渡すのよ。それだけの氷の重さをいちいち確認する家も少ないだろうから、少しずつでも数が重なると馬鹿にならなかったんじゃないの」

 

G「でも、体重計くらいは有る家だって有ったでしょうから、確認する家だって少なくなかったのでは?」

ご「その場合はな、運んでいる途中で溶けたんでしょうと開き直るんだ(笑)」

 

G「え~。確かにそう言われてしまうと、あまり強くは言い返せないでしょうねえ」

ご「それで問題となったんで、東京都経済局が昭和28年に調査した事が有ったのよ。調査した94店中64店、68%の店で貫匁不足だったそうだ(笑)」

 

G「えっ! 普通に7割の店が不正に少なく売ってたんですか」

ご「製造元では元々36貫匁(135kg)の氷を売っていたというんだが、それこそ目減りを四貫匁くらい計算していたらしいんだな。それなのに小売店側は、その目減り計算分を自分たちの懐に入れるために、36貫匁あるものとして売ってしまうと。だから本当に目減りした分は、個々のお客が被る事になっていたわけ」

 

G「でも、その調査の後は改善されたんでしょう?」

ご「都からお目玉喰らったわけだけど、その後もそういう店はやはり有ったみたいだね。夏場になると毎年のように話題になってる(笑)。

  結局、どうせ溶けるものだからって事で、少なく渡すのは当たり前って考え方のままだったみたいだな、その頃は」

 

G「で、電気冷蔵庫の普及と共に、段々と商売が厳しくなっていったんですね」

ご「昭和30年代までは、どこの商店街でも氷屋さんって有ったはずだもの。でも、今やそうそう見かけないだろう」

 

G「ま、田舎の方では商店街そのものもどんどん無くなってますけどね」

 

 

 

*1:昭和29年8月17日付読売新聞