無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(41)

ウメ星デンカ

 不二家提供、藤子不二雄原作によるフジフジ路線第四作ながら、この番組はそれまでの日曜19時半から、火曜18時へと時間帯を移動しての放送でした。

 『怪物くん』も、まだまだそれなりの視聴率だったこその路線継続だと思われますが、では、なぜ時間帯は変更となったのでしょうか。

 実は、従来の日曜19時半の不二家枠は、廃止されたわけではありませんでした。

 『怪物くん』後のその枠は、子供や若者の人気をさらったピンキーとキラーズ主演による実写ドラマ、『青空にとび出せ!』が放送される事となったのです。

 

 これは、先に書きましたように、非常に経費がかかるようになった所謂ゴールデンタイムでの提供をするのに、子供相手の安価な菓子を中心とした展開では、企業としての旨味が無くなってきた事に拠ります。

 そこで不二家としては、夜7時台で扱うお菓子はもう少し高価な物で展開できるよう、対象を若者に移行したのでした。

 そして、まだ訴求力が完全には衰えておらず、それまでの付き合いも有る藤子路線は、費用の安く済む夕方に移動したという事なのでした。

 しかし、やはり19時台の方を中心としていたため、こちらの方は日本水産との相乗り提供となり、更に後には丸美屋も加わったようです。

 

 音盤は、ついにTBS放送テレビまんがの均衡が崩れ、コロムビアの一社独占となりました。朝日ソノラマすらも(単独商品としては)音盤化が叶わなかったのです。

 この頃、コロムビアはついに牙を剥きだし、本格的に子供向け音盤を扱う姿勢となっていきました。

 これを以て、TBS子供番組の音盤は日音原盤で希望社に等しく権利を与えるという習慣は霧消しました。

 この理由は関係者の証言を待つ他は有りませんが、この頃からテレビという媒体が金儲けに走り出したという事が関係しているでしょう。

 

 

紅三四郎

 紅の道着を身にまとう主人公が、様々な格闘技を相手にして倒していくというタツノコプロによる作品で、カマキリ剣法のようなものが出て来たり、梶原一騎真樹日佐夫兄弟による『空手バカ一代』や『世界ケンカ旅行』(名義は大山倍達)に影響を与えたのではないかとも思われる作品です。

 

 当初は主題歌を美樹克彦が歌っていたというのですが、ワタクシはそちらの記憶が有りません。どうも、わずか1クール13本で主題歌が変更となったというのです。

 それには、タツノコの御大・吉田竜夫の意向が絡んでいたようです。

 吉田は、クラウンレコードから出した美樹克彦による当初の主題歌があまり気に入らず、コロムビアのテレビまんが音盤化権獲得のため日参していた木村英俊に、早く歌を替えたいからコロムビアで新主題歌を作ってくれと依頼したというのです。*1

 それを受けて、わずか一週間で仕上げられたのが、堀江美都子の歌う新主題歌だったのでした。

 

 クラウンが作った最初の主題歌は、朝日ソノラマからもシートが発売されました。

 シート会社にも頑なに専属歌手の音源を貸し出さなかったクラウンが、どの様な理由か、ソノラマに貸し出したのでした。結成当初と違い、会社運営に幾分余裕が出て来ていたのかもしれません。

 一方、コロムビアの新主題歌の方は、完全独占となりました。コロムビアは、ここからタツノコプロとの繋がりが非常に密となっていきます。

 「ミスター独占」と言われた橋本一郎の去った朝日ソノラマに代わり、往時のソノラマ独占で苦汁を舐め続けていた木村英俊によるコロムビアの子供番組路線が、この年から大きく羽ばたいていく事となります。

 

 その尖兵となったのが、この『紅三四郎』でデビューとなった、まだ12歳だった堀江美都子でした。

 そしてコロムビアは、堀江のようにフジテレビ『ちびっこのどじまん』で勝ち抜いた女の子たち(男子は声変わりが有るので避けていた)に、次々とフジテレビ・タツノコプロのテレビまんが主題歌を委ねていくのです。

 朝日ソノラマを襲ったのは、独占路線の崩れだけではありませんでした。

 この頃から、一般家庭にもステレオ機器が入り出してくるのです。決して裕福ではない我が父親が購入したのも、正にこの頃でした。

 それはシート時代の終焉と、レコードの本格普及という時代の訪れでした。

 コロムビアの伸張とソノラマの減退は、時代の趨勢でもありました。

 

 

*1:タツノコプロ・インサイダーズ」原口正宏・長尾けんじ・赤星政尚(講談社