無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

漫画投句「野球漫画の系譜(1)野球狂の詩 水原勇気編」

〈ANIMEX 1200シリーズ〉(12) オリジナル・サウンドトラック 野球狂の詩

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Gさん(仮名)「さて、少し間が開きましたが、水原勇気編の方を語ってみましょうか」

ごいんきょ「ケッ」

 

G「相変わらず態度悪いなあ(苦笑)。そんなに水原編が嫌いなんですか」

ご「嫌いと言うか、先ず、『野球狂の詩』が本当に面白かったのは単発当時なのに、どいつもこいつも水原勇気って言い出すのが気に食わないのが一つ。

  それから、”連載決定”の報せを物凄く喜んで心待ちにしていたのに、単発連載ではなくて一人の主人公を据えた連続物だと知って、非常にガックリきた原体験が残っている事が有るな」

 

G「ああ。”連載”って、単発の頃のやり方で毎週載ると思ってたんですね。それじゃ水島先生、アイデア考えるのでノイローゼになっちゃうでしょう(苦笑)」

ご「まあなあ。しかし、そのくらい単発当時は、次回掲載号を楽しみにしていたという事なのよ。前回も言ったけど、最終コマで次回予告が載るんだよね」

 

G「新連載開始の時の予告は、どんな感じだったんです?」

ご「先ず、何号から連載決定!みたいな告知が有ったと思ったな。それで非常に楽しみにしていたら、開始四週間前から1ページだったかな、新登場人物をスカウトが捜し回るっていう予告みたいな漫画を載せるようになったの」

 

G「ああ、それが水原ですね」

ご「勿論、そんな正体は何も明かさず、尻間千太郎というスカウトが、九州、四国・関西、東北だったかな、を順繰りに回って、ここにも良い選手は見つからなかったってボヤくんだよね」

 

G「スカウトが新戦力を探す旅に出ているという予告なんですね」

ご「で、東北で雪に埋もれながらも見つからなかった尻間が、翌号で、すぐそばに居た!みたいな感じで喜ぶわけ。灯台もと暗しで、東京にいたという落ちなんだな」

 

G「顔とか名前は出したんですか」

ご「いや、出さないよ、勿論。それは新連載第一回のお楽しみさ。

  で、わしらもどんな選手なんだろうと楽しみにしながら第一回を読んだら、ドラフトで指名したのが『水原勇気 投手』だったわけ。

  ところが記者も野球関係者も、誰も知らない名前なんだよ。それで、どんな選手なんだって調べたら、女性だってんで大問題になってくるって始まり方」

 

G「たしかソフトボールをやってたんでしたっけね」

ご「女子だから当然そうなるわな。勿論、下手投げで。

  本来、メッツは帯刀という捕手を一位指名で取ると思われていたんだが、そちらは二位にしたわけ。で、帯刀が女の後の指名では受けられませんとか、少し揉めるんだよな」

 

G「で直々に球を確かめに行って、納得するんでしたね」

ご「すぐにじゃないけどね。水原も最初は入団する気なんか無いから、わざと力を加減してたし」

 

G「で、入団したはいいけど、やはり女性の身では大変で、打ち込まれてしまうんですね」

ご「そこで出るのが”ドリームボール”よ。岩田鉄五郎が持ち掛けるんだっけな、勝負球の習得を。ただ、ドリームボールって聞いた時には、まさか水島新司が魔球とかやらないよなって、嫌な感じが有ったけど(笑)」

 

G「魔球ものはそれなりの面白さが有りますけど、水島さんの魅力は違いますもんね」

ご「で、紆余曲折あって、一球だけの最終リリーフっていう登板の形で使われるようになる。それを、各球団の一線級の打者がどうしても打てない。打てないだけじゃなくて、なんか妙な変化をするって不思議な気持ちになるんだけど、一球だけの対戦だから誰も正体を掴めないんだ」

 

G「最終的にドリームボールを打ったのは、メッツで水原のドリームボール習得を手伝った、言わば恩人とも言える広島に移籍した武藤だったですね」

ご「その時にドリームボールの正体が明らかになる。ま、詳しくは書かないでおくが、これが野球の本道からまったく外れていない、本当の変化球って感じの球なんだよな。勿論、実際に投げる事は不可能だろうけど。

  梶原一騎は、自分の漫画、巨人の星がそれまでの魔球物と違うのは、魔球に説得力が有る事だって自慢していたみたいだけど、水島新司はそれを越えてしまったよ。梶原は魔送球の投げ方は解説していない、本当の漫画だもの、あの変化は。

  恐らく内心では非常に忌み嫌っていたであろう魔球漫画を、水島新司は先ず、野球そのものの魅力を描く事で葬り去った。それだけに飽き足らず、魔球だって野球を知っていればきちんとしたものを考えられるんだという意地? 完膚なきまでに旧時代の野球漫画を駆逐してしまったんだよ。

  従って『野球狂の詩』を総括すれば、単発掲載時に”野球を描いた漫画”を漫画史上初めて世に出して野球漫画もどきが跋扈していた旧時代に楔を打ち込み、ドリームボールを描いた水原編で引導を渡したって事になるな。実際、その後は荒唐無稽な魔球が出る漫画って無いんじゃないの?」

 

G「なるほどねえ。あなたが常々言っているように、水島新司先生は”野球漫画の手塚治虫”、産みの親なんだという事が理解できました」

 

 

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