無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

トランプ「大統領」の真の危険性

トランプは本当に反体制だったのか

 トランプを支持していたのは、プア・ホワイト、貧しい白人もいたのだろうが、実は富裕層も支持していたのではないかと思われる。

 TBSラジオ「荒川強啓デイキャッチ」でアメリカ情報を伝えている北丸雄二の感触では、選挙期間中のウォール街ユダヤ人によるトランプの見方は、老若で差が有ったという。

 曰く、年の行ったユダヤ人は、もしトランプが大統領になったら国外へ逃亡したいくらいと言うが、若者はむしろトランプに期待をしているのだと。

 

 トランプは、民主党側のクリントンを蹴落とすために、いかにも自分は体制側ではない、つまりウォール街など旧来の支配層とは一線を画しているという立場を取った。

 では、民主党側でヒラリーと覇を競ったサンダースと、その点では同じ立場だったのかというと、サンダースはハッキリと中間層を伸ばそうという姿勢だったのに対し、トランプは口先ではそう言いつつも、実際に言っていた政策は、富裕層の税率をも下げるというものだった。

 共和党は伝統的に「小さい政府」を掲げるようだし、その党の方針にも沿っていたから、元からの共和党支持者にも覚えめでたく、しかも、実はウォール街の若手にすら希望を抱かせる政策提言だったわけだ。

 

 トランプは反体制の皮を被った、超体制人間である。

 当たり前だ。金持ちなんだから、変革なんか起こしたら最も困る層なのである。

 だから、アメリカ人が本当に変革を望むのであれば、むしろサンダースを支持すべきだったのだが、民主党候補の争いという小さな器の中ですら、トランプからも体制の権化とされるクリントンが勝ってしまった。

 まだまだアメリカ人には「社会主義は悪である」という固定観念が染み付いているのだろうし、実際問題、民衆の成熟度が日本から見るとまるで赤児のように劣っている彼の国では、戦後昭和日本のような理想的な社会主義的社会の実現は難しいかもしれない。

 ま、今では此方も、かなり成熟度を破壊されてきているが。

 

 

TPPと日本

 トランプが選挙中に口にしていた政策を軌道修正する事など、余程の純粋真っ直ぐ君でなければ或る程度は織り込み済みだったであろうし、彼の言動を日本人よりも知悉していたはずのアメリカ人なら、余計にそうであろう、

 だから、例えばメキシコとの国境に壁を作らなかったからといって、彼の支持層がガッカリするかと言えば、むしろトランプらしいと思うのではないか。

 少なくとも、ワタクシはそういう目でトランプを見ていたのだが。

 とは言え、少なくとも姿勢としてはそういう姿勢を続けなければならないだろうし、長がそういう姿勢を執る事は民にも影響を及ぼす事は間違い無く、危険性が皆無だなどとは言わない。確かに予測不能ではある。

 

 日本として現在、最も気になるところは、安全保障とTPPで、どのような姿勢で来るかであろう。

 安倍晋三が急遽、彼との会談に至ったのは、何が何でもTPPを見捨てないでくれという事だったのだろうと思う。

 穿って考えれば、TPPはロシアとの交渉と裏で繋がっていると考えるしか無い。でなければ、アメリカの大統領候補が揃ってTPPに醒めた言動をしているのに、こうも慌てて臆面も無いやり方で通す事に躍起にならないだろう。

 つまり、日本は関税自主権を放棄して完全にアメリカ(ウォール街派)中心の体制に入るから、ロシアとの領土交渉で多少は向こうに譲るのを認めてくれという事だったのではないか。

 だから、プーチン来日交渉(北方領土問題)とTPPの無理矢理な押し通しが重なっていたのだろう。

 

 TPPをトランプが潰すかどうかは、彼に対する一つの試金石にはなるかもしれない。

 彼が本当に旧来の「支配者」と多少なりとも一線を引こうとしているのであれば、TPPからアメリカは撤退しないとならない。

 今のところの報道を見ると、かなりその可能性の方が高いようだが、どうだろうか。今回の大統領選で、如何に多くのアメリカ人が既得権層に忌避感を持っているかが露呈されたので、このまま収束する可能性は、実際に高いかもしれない。

 だがワタクシは、TPPが沙汰止みになったとしても、トランプの経済政策が更なる混乱をもたらす危険性を注視している。

 

 

トランプの真の危険性

 トランプの経済政策でワタクシが最も警戒するのは、「減税」である。これは、ほぼ間違い無く実行されるだろう。

 何故ならば、富裕層も減税されるのだから。

 だから前述のように、ウォール街と言えども若手はトランプの経済政策に期待していたのである。彼らは、トランプが実は「仲間」であると思っているわけだ。

 たしかに、たかだか4年で今のアメリカをユダヤ人弾圧国家に出来るはずもないし、そもそもトランプの娘婿もユダヤ富裕層なのである。そして、娘の方もユダヤ教に改宗したのだという。

 

 アメリカの「ウォール街支配」に嫌気が差していた人々は一定数いたのだろうが、民主党クリントン、そして共和党のトランプという両建ての構造の前に、またも届かなかった。

 アメリカは、「反体制の皮を被った超体制」を選択してしまった。

 その結果もたらされる富裕層減税政策により、歪みの肥大化が世界的に波及していたアメリカ経済の歪みが、更に大きくなる危険性が非常に高まった。

 TPP締結は日本とアメリカの悲劇だったが、これは世界的な悲劇に繋がっていく可能性が高いとワタクシは危惧している。

 「直ちに影響は無い」ので、きっと当面は持て囃される事だろうが。