テレビ主題歌音盤史 ~子供向けドラマ編~(7)
丸出だめ夫
昭和40年代初頭に赤塚不二夫とギャグ漫画の双璧と目されていた、森田拳次による少年マガジンの連載漫画を実写ドラマ化したものでした。
主人公の丸出だめ夫くんは、丸眼鏡を掛けた勉強も駄目、スポーツも駄目のまるで駄目な少年。彼の父親は発明家で、ボロットという名のロボットを、母親の居ないだめ夫くんに作ってあげます。
だめ夫くんとボロット、それに発明家のお父さんらが織りなすドタバタ騒動でした。
だめ夫くんとボロット、それに発明家の父親の関係はドラえもんの世界の元祖だと、10年以上前に我が本拠ブログで書いたのですが、わりと受け入れられたようで、今ではそうした表現がネット上で普通に見られます。
白黒テレビ版では、だめ夫くんの役を、当時の子役スターだった保積ペペが演じたことも話題となりました。
音盤は、小学館の『おそ松くん』をテレビ化前にソノシート化していた朝日ソノラマが、講談社の『丸出だめ夫』の方もテレビ化の前にソノシート化し、独自の歌も作られています。
また、古谷製菓が何故か、この歌を小型ソノシートで非売配布したようです。
その後のテレビ化にあたり、音盤の方は朝日ソノラマが引き続き担当し、それまでの表紙に「テレビ主題歌入り」との文字が入れられて、主題歌とドラマ部分出演者の差し替えがされました。
これは、『おそ松くん』でもほぼ同様の措置が執られることになります。
途中、古谷製菓が”丸出だめ夫”の商標を獲得していたことが判明し、現場は困惑しました。*1
東映の関係者がはるばる北海道へ渡り、古谷製菓の社長を説得して、テレビの方の提供も古谷製菓でやってくれる事となったのでした。
怪人四十面相
題名は四十面相ですが、要するに江戸川乱歩の『怪人二十面相』ものです。
『怪奇四十面相』という原作題が8話目に存在するようですが、何故わざわざ「四十面相」の方をテレビ題にしたのかは謎です。
わずか13回しか放送されなかった事もあり、長い間、幻のような作品でしたが、CS放送の時代となって発掘され、更にDVD化もされています。
一応はキングレコードによって主題歌音盤化もされているのですが、アニメの『マリンキッドの歌』との組合せという形にとどまりました。
忍者ハットリくん
藤子不二雄が月刊少年に連載していた漫画の実写ドラマ化です。後に、実際の執筆者だった藤子不二雄Aの単独作品となりました。
しかし、このテレビ版は井上ひさしによる世界と言って良いもので、当時としてはキツめのギャグが刺激的でした。
また、能面のようなものを付けたハットリくんの姿の不気味さは、当時に見ていた人間の語り草となるところです。
京都作品とは言え東映という事で、音盤は朝日ソノラマによる独占でした。
『鉄腕アトム』以来、橋本一郎が切り拓いたアニメ音盤路線で大きく伸張した朝日ソノラマに、後に”宇宙船”というマニア雑誌の初代編集長となる村山実が加わり、東映の『スパイキャッチャーJ3』で実写作品路線を切り拓きました。
橋本が『狼少年ケン』で東映動画と独占の契約を結んでいたので、その流れで自然と実写の方も独占になっていったのでしょう。橋本が手掛けない作品は、殆ど村山が担当する働きぶりだったようです。
この頃はまだ、老舗レコード会社はジャリ物の音盤など歯牙にも掛けていませんでした。元々報道が出自である新興の朝日ソノプレス社だからこそ、果敢に子供番組を次々と音盤化したと言えるでしょう。