無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

ゴーマニズム観戦歴(2)

今回の喧嘩稼業

 文学がメタメタにやられすぎ。しかも、あの体勢から桜井が目を突かないって、稼業世界の描写としては温すぎだろう。

 そして上杉の手から学んだ耳ちぎりからの煉獄。

 つくづく富田流も梶原柳剛流も、パクリ一派なのだった。

 三手以上入ってしまっているので、これで普通なら文学がかなり優勢となるのだが、なにしろメタメタにやられた後なので時間も短くなるだろうし、桜井はまだ動けるだろう。

 

 一方の文学は、メタメタのところに煉獄を繰りだして、当分はまともに動けない。

 そこで後の先の桜井が、いよいよ御殿手の技を繰り出す。

 シラットを想定していて、しかも動けない状態の文学は、まともにそれを喰らってしまうだろう。

 入江文学を愛する者たちの嘆きの時が、刻一刻と近づいている。

 

 

ゴーマニズム観戦歴(2)

 改めて見直して少し意外だったのは、初期のゴー宣では、まだ絵が下手だったのだ。

 但し、まだ年齢も若く考え方も今よりも幼稚だったので、その分、迫力と言うか訳の解らない勢いのようなものが迸っている。

 力業で読ませていた当時と言って良いだろう。

 

 ワタクシが初めて雑誌で『ゴーマニズム宣言』を読んだのは、「部落差別」に関して描いた回だったと思う。

 『朝まで生テレビ!』で禁忌を切り拓いてから、少しずつ雑誌媒体ではその手の記述が出ていた頃だった。

 ワタクシは、テレビの再放送から様々な音声が消されていくのが我慢ならなかったし、その手の情報を求めていた。だから、多分、表紙に「差別」どうこうでゴー宣が紹介してあったのが目に入って、コンビニで立ち読みしたのだと思う。

 ほどほどなら、立ち読みも害悪ばかりではないという証左と言える。その様な出会いでも、十年、二十年という読者が育ったりするのだから。まずは中身が目に触れないと、出会いの機会は狭まるばかりだろう。

 

 その差別の回は、凄まじい内容だった。

 話が悪い意味で出来過ぎで、とても完全に信じることは出来なかった。そのままドラマに出来るような話だ。

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 上のようなコマで締められているのだが、まだまだ絵も、表現力も、構成も、陳腐なものと言わざるを得ない。

 では、小林よしのりは、どのように技量が上達したのだろうか。

 先ず、どうしたって読者という存在が大きく関わっている。

 

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 普通、漫画家というのは事を荒立てたがらない人間が多く、抗議を受けると大体は一も二も無く引き下がってしまう。

 ところがこの男は、流石にゴーマンだった。悔しきゃお前も好きなこと言って楽しませる才能を身に付けろと言い放った。

 但し、次のような覚悟も有ってのことだ。

 

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 後に読み返した時だと思うが、上のコマにもホロリとしてしまった記憶が有る。泣いたな、多分(笑)。

 だが、ホロリとする必要なんかなかった。だって、「その日」はもう、絶対に来ないのだから。

 小林が消える日が来るとすれば、自分で「退位」を決意した時になるだろう。

 

 とにかく、こうした異論反論脅迫に立ち向かう事により、彼の客観性が磨かれていった。

 客観性が磨かれるという事は、絵や文字の上達とも密なる関連性が有るとワタクシは思っている。

 これは、先ず形から入れという事で、例えば習字を習わせると落ち着きが出るというような事も有る。

 絵や字を上手く描くためには、構成を考えなければならない。全体を俯瞰して見なければならない。

 

 客観性が磨かれていれば、或る程度は収まりの付く字や絵の配置が考えられるし、逆に訓練で配置能力を身に付けさせることにより、客観性を身に付けさせることも出来るわけだ。

 ワタクシ個人を考えてみても、高校くらいまでの自分しか目に入っていなかった頃は、自分でも恥ずかしい字しか書けず、かなりの劣等感が有った。

 だが、その後に社会で揉まれ、客観視が出来るようになると、自然に字の収まりを考えて書くようになり、決して達筆ではないが、以前の様な子供じみた字ではなくなった。

 勿論、どのような事にも例外は有ろうが、納得できる人は多いのではなかろうか。

 

 しかし、小林よしのりには、もっともっと強烈な難敵が立ちはだかる事となる。

 それら難敵との戦いによって、彼の客観性、いや、敢えてもっと俗な言葉で表現すれば、彼の「魂」が磨かれていくのである。

 なにしろ、その敵との戦いは、文字通り「命懸け」のものだったのだから。

 オウム真理教である。

 

コーマンかましてもいいですか

 ダイヤモンドを磨く事が出来るのはダイヤモンドだけ。

 ゴーマニズム宣言を磨く評論はワタクシにしか出来ない。

 

ゴーマニズム戦歴 (ベスト新書)

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*1:「ゴーマニズム戦歴」KKベストセラーズ