無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(57)

ハゼドン

 『みなしごハッチ』の大当たりよ再びと、フジテレビがまたも狙った子供向け母恋ものでした。

 今度は魚を擬人化し、主人公はハゼの子供とし、憧れの人魚シーランや、フグのプーヤンなどと行動しながら、強い魚を目指すというものでした。

 魚版 赤胴鈴之助みたいなものです。

 

 主題歌は、これも放送途中で開始主題歌と終了主題歌が入れ替わる形でした。

 音盤としては、コロムビアが縦長のSCS500番台で出した他に、キャニオンレコードも出しています。

 キャニオンレコードは、ニッポン放送が8トラックテープを手掛けたポニーという会社を作ったのに続き、その音源供給元としてレコード会社も作ったものです。

 

 ニッポン放送はフジテレビの親会社とも言えたので、フジテレビで放送されたハゼドンの歌は、キャニオンでも出したというわけです。

 この頃、キャニオンレコードはコロムビアとなんらかの提携をしていたと思われます。

 その大元となったのは昭和46年、幼児教育番組『ママとあそぼう!ピンポンパン』のピンポンパン体操が、200万枚超という特大ヒットとなった事です。

 

 その頃、ピンポンパンのレコードは、コロムビアが独占に成功していたようです。(初期は縛り無し)

 コロムビアの販売力の賜物か、すぐにピンポンパン体操が大ヒット。これには、キャニオンレコードという系列レコード会社を持つ関係者が地団駄を踏んだのでしょう。なにしろキャニオンは、左前となっていました。

 そしてピンポンパンのレコードはキャニオンも出すこととなるのですが、しかし独占とはせず、功績の有るコロムビアにも引き続きピンポンパンのレコード販売権を与え続けました。

 

 そうした繋がりが、この『ハゼドン』でも関係しているのでしょう。他にもこの頃、コロムビアとキャニオンによる子供番組音盤が幾つか有ります。

 後発のキャニオンレコードは、そもそもコロムビアからの人材が多かったと言います。*1

 通常そのような場合、遺恨が生じて、同じ仕事をしないようになるものだと思うのですが、やはり強大になっていたテレビという媒体を背景に持つ強みだったのでしょうか。

 

 

おんぶおばけ

 隆一まんが劇場と副題がついていたように、漫画家の横山隆一が、自身で興したアニメーション制作の独立プロである、おとぎプロで制作していたものをテレビ企画に持ってきたものです。

 一年放送で52本の内容が必要となりますので、話の内容を民話に求め、おんぶたちを絡めて展開させたもので、言ってみれば、まんが日本昔ばなしを先んじたものでした。

 

 主な提供会社に住友生命が名を挙げ、子供のいる加入家庭に、すみせいテレビメイトという小冊子を配っていました。将を射んと欲すればではありませんが、子供をダシに、新規契約や契約の固定化を狙ったものでしょう。

 製菓会社が乗り気でなくなってからというもの、テレビまんがの提供会社も色々と変遷を辿り、ついに金融機関までに至ったわけです。

 必然、大人も見られるような内容が意識されたでしょうし、それで民話路線が採用されたのでしょう。

 

 音盤はキングレコードから出され、朝日ソノラマも展開間も無いパピイシリーズで出しています。

 但しキングは、挿入歌のシングルも複数出しました。権利獲得のために、複数枚のレコードを出すという条件を出したのかもしれません。

 コロムビアがLPや挿入歌シングルの発売で子供番組に猛烈な営業を仕掛けだした時分ですので、久々にやる気を出したキングも、そうした展開にならざるを得なかったのでしょう。

 

 

ど根性ガエル

 ひろしのTシャツに張り付いた平面ガエルのピョン吉が活躍するという突飛な発想が受けたギャグ漫画で、東京ムービーによる作画も良く、テレビ版も人気を博して二年の放送となりました。

 開始主題歌は一貫していましたが、終了主題歌は途中から変更され、春夏秋冬によって歌詞が替わる”ど根性ガエルマーチ”となりましたが、夏場だけはオバQ音頭以来の伝統とも言うべき音頭となりました。

 音盤はいずれもコロムビアの独占で、開始主題歌と初期終了主題歌のものがSCS500番台による縦長ジャケットのものとして出され、マーチと音頭の頃には、普通のジャケット形態に戻りました。

 これだけの人気番組なのに、朝日ソノラマが参入しなかった事情が不明です。

 

 

マジンガーZ

 永井豪がロボット物企画の量産をし始める、その端緒となった作品で、この漫画が無ければ、今にまで続く数々の戦闘ロボットものの隆盛は無かったでしょう。

 そのくらい、運転席でロボットを内部から操縦するという発想は画期的でした。

 

 そして、テレビまんがとしても非常に特筆すべき足跡を幾つも刻んでいます。

 当初は前番組の『ミラーマン』から引き続いての大塚グループ提供でしたが、やがてポピーがジャンボマシンダーという玩具をCMで流すようになりました。

 この玩具自体は、言ってみれば大きさが非常に大きいロボット人形というものに過ぎませんでしたが、CM映像でのロケットパンチの描写が物凄い事も有って、大当たりとなりました。

 

 但し、あまりに実物のチャチなバネ仕掛けのロケットパンチと違い過ぎるため、 CMの映像表現が問題視される切っ掛けとなりました。

 それはともかく、製菓会社がテレビまんがの大旦那として距離を置き始めてからというもの、旦那捜しに四苦八苦していたテレビまんが界が、とうとう玩具会社という新たな大旦那と結び付いたのです。

 

 ポピーは更に、小さいながらも全身が重量感の有る金属で出来ている”超合金”という人形を開発。これこそ玩具史に残る大当たりとなりました。

 以後は、次々と様々なロボットものが制作されるようになり、玩具会社がこぞって提供について、ポピーが提供する場合は、その悉くで”超合金”人形が作られました。

 こうしたロボット玩具は、更に後年の『機動戦士ガンダム』に於いて、プラモデル人気へと変貌していきます。

 

 音盤としては、コロムビアのSCS500番台と、ソノラマのパピイシリーズという、東映動画でのいつもの並びとなっています。

 また、コロムビアによるLP盤も制作され、数々の挿入歌が番組中でも使われました。

 テレビまんがも、LP盤を制作するのが当たり前となっていく時期です。

 即ち、それだけステレオ機器が一般家庭にまで普及し始めていたという事でした。

 

*1:「昭和のテレビ童謡クロニクル」小島豊美とアヴァンデザイン活字楽団(DU BOOKS)