無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(34)

キングコング 親指トム

 キングコングは、アメリカ主導で作られた、日米合作のテレビまんがです。

 そもそもの話として、昭和40年前後のアメリカテレビ界で、旧作映画の焼き直しテレビ化や、コミック作品のテレビ化が増えたという事情が有りました。

 シェーン、アイアン・ホース、バットマングリーン・ホーネットといったところですが、昭和8年にRKOで作られた映画が大ヒットした『キングコング』も、テレビまんがとして復活していたのです。

 このテレビ版『キングコング』は、アメリカのビデオクラフトという所と、日本の東映動画とによる合作でした。

 

 アメリカでは番組の試作版が第一回として放送されたりするのですが、『キングコング』の第一回は、日本では昭和41年の大晦日に、『世界の王者キングコング大会』(提供:大塚製薬)と称して、NETで20時から56分番組として放送されました。

 音楽担当は小林亜星となっており*1、歌は藤田淑子となっていますので*2、おそらく、その番組で使われた主題歌が、そのまま昭和42年版でも使われていたのでしょう。

 このキングコング大会の内容は、コングの登場編で、お馴染みの、エンパイアステートビルにコングが登る場面も有ります。

 

  この「合作」という形態は、外国からもお金が貰えるということで、実入りは結構なものが有ったようです。当時の東映動画関係者は、次のように語っていました。

 利益があがるのは合作だ。常時一本は合作を進めて行きたい。アメリカの次は、ソ連、フランスとも考えている。動画の国際性は大きいですよ。*3 

  しかし、お金をたくさん貰える分、全ての発言力は向こうに有りました。そして、再放送権の消滅後は、日本ではOP・EDや名場面としてのほんの一部分すら、放送もソフト収録もされないという状態が続いています。

 

 通常放送は、昭和42年の4月5日より始まりました。提供の中にバャリースオレンヂが有って、当時の視聴者には懐かしい、チンパンジーの活躍する珍パンものと呼ばれるCMが流され、猿繋がりの興趣が有りました。

 『キングコング』の中でバャリースの珍パンCMが流れていた事は、漫画家の小林よしのりも何かで描いていた事が有りますが、記憶力が良いと思います。

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 この頃のNET水曜は非常に強力な布陣で、後発局のため全体的にはうだつの上がらなかったNETが、他局を大いに震撼せしめていたものです。

 キングコング当時も、他にジェリコ、ターザン、特別機動捜査隊という並びは、平均20%の視聴率を獲得していたのでした。*5

 

 キングコングの音盤は、朝日ソノラマから新たな番号としてN系列が作られ、N-1として発売されました。

 このN系列は、「ウルトラブックス」と呼ばれるもので、ハードカバーに分厚いA4冊子の豪華版でした。

 恐らく、日米合作の、しかも「キングコング」という名の通った版権ものという事で、従来のソノシートでは採算が厳しかったのではないでしょうか。

 ソノラマの宿敵ビクターも、同様の豪華版を出しましたが、こちらは更に、とびだしコングやカレンダー、お面、カードなどが付録に付いておりました。

 これら豪華版シート冊子は、当時のシート音盤の通常より二割五分増しくらいの高価なものでしたので発行数も少なく、付録まで完品の物が残っていれば、数万円で売れるはずです。

 

 他にグラモフォンがキンダーレコードという名称で出したものと、テイチクのものと、二種のレコードが発売されました。

 レコードの二種では、シートの二種では扱われなかった『親指トム』の主題歌と組み合わされました。

 アメリカのTV漫画というものは、30分番組の中で3本立てという形式のものが結構あって、前後二本の主たる番組の間に、毛色の異なる別番組を挟むという形態も多用されました。

 この『キングコング』もその形式で、前後二本のコングに挟まる形で、『親指トム』一本が放送されていました。

 その『トム』の方の主題歌はシート音盤では収録されなかったわけですが、その辺の事情はよくわかりません。

 

ピュンピュン丸

 『ピュンピュン丸』も東映動画作品ですが、既に東映のソノラマ独占も崩れていましたので、ソノラマのソノシートの他にキングレコードがレコードを発売しています。

 『ピュンピュン丸』は、実写の方の東映制作『忍者ハットリくん+忍者怪獣ジッポウ』と、ほぼ同時にNETが放送したものです。

 どちらもギャグを基調とした忍者ものであり、どちらにも怪獣が話の中で関わってきたりして、この頃の子供番組制作姿勢が出ています。

 『ピュンピュン丸』は放送当時、それほど人気が無かったため、音盤もあまり普及しなかったようです。シートですら、そう簡単には出て来ないので、レコードとなると更に稀少で、これも万級品となっています。

 

ドンキッコ

 ドンキッコは石森章太郎(後:石ノ森章太郎)の初テレビまんが化作品で、『ピュンピュン丸』原作のつのだじろう共々、いよいよトキワ荘組が一斉に羽ばたきだした頃合いです。

 制作はピープロで、前作『ハリスの旋風』や『マグマ大使』では朝日ソノラマが独占、もしくはそれに準じる形で優遇されていましたが、ここからピープロ作品も、各社競作体制となっていきます。

 シートは、毎度のソノラマとビクター、更にふらんす書房のミュージックグラフが出され、レコードは、キング、テイチク、クラウン、東芝の4社からと、結構な数の業者が参入しています。

 しかし、正直、この番組は注目度が低く、参入しやすいという事で多くの会社が音盤を出したのだと思われますが、どこも大コケしたのではないでしょうか。

*1:TVアニメ25年史(徳間書店

*2:昭和41年12月31日付読売新聞

*3:昭和42年2月7日付読売新聞夕刊

*4:昭和42年4月1日付読売新聞

*5:昭和424月14日付読売新聞