無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

挿しす世相史「麻布学園中学生が内郷丸遭難事故に遭う」

 昭和29年10月8日(金)13時30分頃、神奈川県相模湖上で、修学旅行中の麻布学園生徒及び教師の一部が、遊覧船内郷丸の沈没により、遭難するという事故が起きました。

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 この原因は非常にハッキリしており、定員を遥かに超過する人数を乗せた事によるものです。

 本来的な定員は19名だったものを、この少し前の6月に35名乗れるように”改造”したものですが、この改造は海運局には届けられておらず、単に座席を増やしただけで、安全性の設計は全く考慮されていないものでした。

 

 これだけでも非常に杜撰な運営ですが、平時は50人くらい乗せる事も普通に有ったようで、こうした事が日常的だった事から、関係者の安全意識が欠如されていったものでしょう。

 とは言えこの時は、80人も乗せていたというのですから、常軌を逸した無軌道ぶりでした。

 

 本来の定員の4倍もの人間を乗せた、それも造りのしっかりしたものではない、単なる木造船では、沈没するのは必定とも言えた、全く言い訳の余地の無い完全なる人災でした。

 運転手もまだ21歳と非常に若く、聴取に対して、生徒たちが船を大きく揺すったのを注意してもやめなかった、先生も注意しようともしなかった旨の証言をしております。

 

 不幸中の幸いではありませんが、木造船であったために船は再び浮かんだため、多くの生徒はそれにしがみついて救助されたものの、最終的に22名の生徒の無事が確認できませんでした。

 麻布中学と言えば、言わずと知れた関東の超名門難関校で、有為の人材が22名も犠牲になった事は、大変に痛ましい出来事でありました。

 

 

*1:昭和29年10月9日付読売新聞