無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

漫画投句「プレイボール」(ちばあきお)

Gさん(仮名)「さて、『キャプテン』に続いて『プレイボール』の方なんですが」

ごいんきょ「実は、わしは『プレイボール』から先に読み始めているんだよね。週刊ジャンプの方は毎週読んでいて、新連載になった第一回から読んでるんだけど」

 

G「これは、別冊ジャンプの『キャプテン』の主役だった谷口タカオの高校での話ですね」

ご「うん。で、連載開始の時に、扉の煽り文がなんか有ったんだよね。内容は忘れたけど、要は、その主人公、谷口だな、の事は知っている読者もいるって感じだったんだよ。わしは意味がわからなかったんだけど。ずっと後になって、知り合いのお兄さんから『キャプテン』の1~3巻を読ませてもらって解ったんだけど」

 

G「週刊連載の当初は、谷口くんは野球が出来なかったんですよね」

ご「そう。青葉中学との試合で指を痛めてしまい、曲がってしまったままなのでボールをまともに投げられなくなってたんだな」

 

G「それで、野球部の練習をずっと外から見学してて」

ご「そのうちサッカー部の主将が見かねて、サッカーを勧めるんだよ」

 

G「で、谷口くんの頑張りは、サッカーでもレギュラー選手も音を上げるくらいの活躍をするようになっちゃって」

ご「ところが、どうしても野球への未練を断ち切れないから、主将がポカスカ鉄拳制裁をしちゃうんだな。それで表向きはサッカーに集中していたかと思いきや、子供達の草野球で審判をやってるところを主将に見つかっちゃって」

 

G「流石に主将も、谷口の野球への愛情の深さを知って、野球部への渡りを付けてあげるんでしたね」

ご「野球編が始まるまで結構あったけど、まったく間延びしないというか、ああいう人物描写の巧みさって、秘訣はなんなんだろうと考えるよ。水島新司の『ドカベン』も、野球編に入る前の柔道編も面白かったからなあ」

 

G「やっぱり、登場人物の一人一人に吸引力が有るんですね」

ご「うん。水島新司の場合は、個性豊かな登場人物が活躍するからわかりやすいんだけど、ちばあきおの場合は、谷口にしたってサッカー部主将にしたって、野球部主将の田所にしたって、みんな当たり前の人間なのにああも吸引力が有るっていうのが、余計に凄い。

  兄貴のちばてつやにしてもそうなんだが、あの秘密が解明できない」

 

G「一言で表現すれば、”才能”っていう事になるんでしょうけどね」

ご「それで、野球編になって暫くしてから、次回は巻頭オールカラーって予告が出たのよ」

 

G「よく覚えてますね」

ご「だってさ、ジャンプは毎週、巻頭カラーの漫画が有ったんだけど、カラーの部分は4ページくらいなの。凄く綺麗なんだけど、たった4ページなんだよね。

  それがオールカラーってなってるんだもん。こりゃ凄いやと楽しみだったのよ」

 

G「やはり綺麗だったわけでしょ、オールカラーは」

ご「それがさあ、いつも通りのカラーは4ページくらいで変わらなかったの。で、その巻頭カラーの部分が終わってアンケートページを挟むんだけど、そこから妙に赤っぽい色だけ着いてたのね」

 

G「所謂2色カラーってやつですか」

ご「そうそう。そんな事は後から知るんだけど、それまで巻頭カラーで綺麗だったのは4色カラーと言って、それが本当の意味でのカラーで、また別に2色カラーっていう赤系の色だけ着ける方法も有ったんだね。

  人物の肌色なんか、薄めの赤っぽい色でさ。青系とか黄色系とかは着いてないんだけど、人物に肌色っぽい色を付けるだけでも、わりとカラーっぽい感じにはなるのね。ガッカリしたけど(笑)」

 

G「その後、ジャンプでは巻頭4ページ4色・他2色でのオールカラーというのが定着しますが、一番最初は『プレイボール』だったんですね」

ご「わしの記憶が確かであればな」

 

G「アンケートページって、あれですよね。なんとか大懸賞っていう」

ご「そうそう。切手を貼る葉書用紙が挟まってて、そこにアンケートを書き込むわけ。あれがジャンプ躍進の秘密だったのよ」

 

G「でも、大昔から漫画雑誌って読者アンケートで人気を調べてたでしょ?」

ご「だから、切手が必要とは言え用紙を用意していたのと、カラーで賞品を紹介する大懸賞という形でやっていたのが利いたんだよ。いつも賞品が欲しくて堪らなかったもの」

 

G「ああ。けっこう送ってたんですか」

ご「送ってたなんてもんじゃないね。よく、ジャンプ躍進の合い言葉が”友情・努力・勝利”だったと言われるだろ。実はあれこそが、『キャプテン』『プレイボール』の人気の秘密だったのよ」

 

G「はあはあ。たしかに3要素が見事に使われてますね」

ご「そんな一般的な意味じゃなくて、そのアンケート用紙でたしか最初の質問が、好きな漫画を3つ選んで下さいって設問で、次が、何十かある語句の中から、どんな事が描かれている漫画が好きか3つの言葉を選んで下さいって設問だったのよ」

 

G「よく覚えてますね(苦笑)」

ご「凄くよく覚えてる。だって、正に『プレイボール』を思い描きながら選んだから。それで友情・努力・勝利の3つを選んだのよ」

 

G「え? あなたがですか?」

ご「そう。わしが(笑)。わしが決めたのよ、ジャンプの合い言葉(笑)」

 

G「ははは(笑)。まあ、その言葉を選んだ人が多かったって事ですね」

ご「という事は、『プレイボール』こそがジャンプを代表する漫画だったわけ。当時はテレビ化もされなかったけど、それは間違い無くそうなの。

  だって、あの当時のジャンプの人気漫画で、その3要素が入った漫画って他に無いよ。『包丁人味平』には友情って友情は関係無いし、『アストロ球団』は超人だから、努力しなくても凄いわけ。延々試合をやってて、勝利の場面も滅多に無いしね(笑)」

 

G「それ以前ですと、『父の魂』『男一匹ガキ大将』『荒野の少年イサム』『侍ジャイアンツ』なんていうのが有りましたが、どれも確かに、その3要素で描かれた漫画ではないですね」

ご「で、『プレイボール』の後に人気になった漫画もそう。『キン肉マン』『リングにかけろ』『北斗の拳』なんてものからは、努力が無くなっていくの。みんな、その場その場の瞬発力で勝っちゃう」

 

G「確かに考えてみれば、その3要素でバッチリはまる漫画って、あまり思いつかないですね、その頃のジャンプで」

ご「だから、わざわざアンケートに答えるような熱意の有った読者には、『プレイボール』を意識して答えてた人が多かったって事なんじゃないかって、わしは思うのね。これって、意外とみんな気付いてないと思うのよ。わしはアンケートに答えた本人だから、物凄く意識して見ていた(笑)。

  で、暫くしてからコンタロウの『1・2のアッホ』だったか『ルーズルーズ』って漫画で、友情・努力・勝利がジャンプの合い言葉って内輪ネタが出て、みんながその言葉を知るようになったの」

 

G「恐怖の内輪ギャグですね(笑)」

ご「わしは物凄く好きだったんだけど、当時の日本人にはまだ早過ぎた。ひょうきん族を経て、とんねるずの登場で、今や内輪ギャグなんて当たり前になったけど」

 

G「いやあ、なかなか濃い話…と言うか、濃すぎる話で、けっこう貴重な話だと思うんですが、通じる人がかなり少なそうですね、今回(苦笑)」

ご「いいんだよ。そんな記事の宝庫なんだから、このブログ(笑)。

  わしは徒花を咲かすのが好きなんだ」

 

G「四方山話で長くなってしまったので(笑)、肝心のプレイボール本体に関しては、また次回に続きでやりましょう」