無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

漫画投句「男組」

喧嘩漫画の系譜(5)「男組」(雁屋哲池上遼一


 

  これは系統としては前稿の「ワル」の流れに有って、どこまでも渇いた悪党が出てくる話ではあるが、主人公は、その悪党を退治しようとする側だというのが違っている。

 それから、太極拳、中国拳法が主たる手法として描かれているというのが目新しかった。ブルース・リー「燃えよ!ドラゴン」による空手・拳法が一大ブームとして、あちこちで持ち上げられていた時分を反映している。

 ワタクシが覚えている技だと旋風脚というのが有って、片膝を立てた姿で一回転して周りの敵を一網打尽に倒すのだ。

 「ハァッ!旋風脚!!」なんて言いながら真似をしたものだ。

 

 舞台は一応高校なのだが、これが「ワル」を更に格段に進化?させたもので、悪役の神竜剛次という男が恐怖で支配しているのだが、これが教室をナイトクラブのように改造してしまっている程の無茶苦茶ぶり。

 それだけ金も力も有る訳だが、その理由は神竜の腕の他に、彼の父親である謎の有力者の力でもある。日本の政財界を牛耳るその男は、後に「影の総理」として真の敵として登場するが、その父親の力で、神竜に逆らった人間は、過去に18人が行方不明になったり、更には有名な評論家を父に持つ男の場合は、その家族ごと消えてしまったりしているのに、まったく報道すらされなかったという…。

 ほとんど支離滅裂な設定とも思えるが、池上遼一の迫力有る絵と、太極拳の目新しい動きとが相まって、なかなかの人気だったようで、結構な長期連載となった。

 

 主人公は流全次郎(ながれ・ぜんじろう)。

 父親殺しという名目で少年院にいた彼に、神竜の魔の手から学園を救って欲しい校長が目を付け、連れてきたのである。

 流は自ら誓いを立て、両手に手錠をはめたままでいる。だから勢い、足技が中心のような感じで、先の旋風脚もその一連の動きである。また、円の動きを取り入れた太極拳が主として描かれているので、そのような描写も多い。

 彼には院中で知り合った五家宝連という仲間がいて、それぞれ武芸百般に通じていたり、知能指数が高かったり、盗みが上手かったり、力が有ったり、動物と話せるなどの特技を持っている。

 

 相手の神竜は真剣を振りかざし、しかも常軌を逸した腕前の持ち主である上に、財力と恐怖支配とを駆使して様々な敵をも流たちにぶつけてくる。

 舞台は高校だが、「ワル」ですらたまに描かれていた学園風景のようなものは完璧に皆無で、次から次へと格闘場面が続く。

 最後の最後に出て来た影の総理の顔が、笹川良一その人だったと、当時の友人が驚いていた。あんなの大丈夫なのかなと。

 この辺が、雁屋哲雁屋哲たる部分なのかもしれないが、全般的には思想のようなものは押し出されておらず、純粋な格闘漫画として楽しめる。