昭和唱和ショー「昭和のうちのお父さん」
以前、祖父がよく「人間枕は買うても無い」と、寝転がっていたワタクシをからかっていた事を書いた。
すぐ後に検索してみたら、意外に多くの人がその言葉を書いていて、やはりあれは、祖父も子供の頃に自分の親などにやられていた事だったのだろうと思った。田舎では、代々受け継がれているものなのだ、きっと。少なくとも昭和時代までは。
昔の男って、子供に対してしょうもない接し方しか出来なかったのだ。
と言っても、「人間枕」は、祖父がそれをしてくるとワタクシはキャッキャ言いながら逃げ回っていたのだが。
もし父親がそれをしていたなら、きっと鬱陶しく感じて、本気で嫌がっていたに違いない。身近すぎて、接触がむしろ鬱陶しかったりするのが自分の親だ。
我が父も、やはりしょうもない接し方をしていた。
よく多用していたのは、自分が尿意を催すと、「代わりにトイレ行ってくれ」と言うのだ。
意味が解らん。子供ながら「何それ」と思っていた。それにどう答えろというのだ(苦笑)。
しかも度々なのだから、返事をするのも面倒になる。だが、彼とすれば数少ない、子供に通じる話し言葉だったのだろう。
しかし、これも他の人間から、「我が家でも有った」と聞いた。
あとは、足の親指と人差し指でこちらのふくらはぎなどをつねるというのもよく有った。
ちっとも面白くないし、しかも痛いしで、これは本当に鬱陶しかった。
ずっと後年に、睦言の後に或る相手に手持ち無沙汰でこれをやったら、私の父親もそれやってたと言われて驚いた。
こんなものも、各所で受け継がれていたのか。
痛いと言えばヒゲだ。
子供を胡座に抱き抱えて、ほっぺたなどに自分の顎髭を押し当てジョリジョリしてくる。
これも痛いだけなので本当に嫌だった。
それから、これは我が家だけだろうと思うのだが、「温泉に行くか?」と聞いてくる。これも本当に多用していた。
初めて聞いた時は何を言ってるんだろうと純粋に不思議だったが、すぐに放屁音がして、「ほら、コタツに入れ」などと抜かした。
わざわざコタツになど入らずとも充分に臭かったが、子供の頃はそれでも意味がわからないので聞いたら、温泉はこういう匂いがするのだと母親が笑いながら解説した。
つくづく思い返すに、おばか一家である。
昭和のお父さんは、自分の父親が明治男だし、自分も完全週休一日で、たまの休日は体を休める事に精一杯だったから、そうは子供と一緒に遊んだり、どこかへ出掛けるなどは無かったと思う。
家事も育児も、ほとんど母親が全てやっていたろう。
だから自分の子供と接するのにあまり慣れていなくて、せめてもの触れ合いもそんな形でしか発露できなかったのだろうと、自分が成長してから得心した。
今のお父さんは子供と触れ合う事になれているから、こんなしょうもない事はきっとしていないと思う。
でもヒゲジョリジョリはクレヨンしんちゃんでも見たし、今でもあちこちの家でやられてそうだな。
もしかしたら、他のも結構やられているのだろうか。