漫画投句「実録シリーズ(島田賢司)」
Gさん(仮名)「随分と唐突な感じの漫画ですね。どうして扱う事にしたんですか」
ごいんきょ「いや、単に手元に有ったんで、簡単に再見できるから(笑)」
G「あ~…、やはり…。
これはその名の通り、実際に有った事を描いてるんですよね?」
ご「”事実を事実のまま描く事は難しい、この漫画はそれに挑む”と前置きして始まった『空手バカ一代』がどんな漫画だったか知ってるだろう?」
G「ああ、そんな感じなんですか(苦笑)」
ご「ああ。全っ然、実録じゃない(笑)。
これは月刊少年ジャンプに載っていた漫画なんだが、わしは元々が実録モノが好きなんで、わりと好んで読んでいたのね。当時は子供だったし、描いてある事はみんな事実だと思っていたのよ」
G「でも、そうでもなかったんですね(苦笑)」
ご「かなり適当(笑)。
ただ、功成り名を遂げた人間ばかりではなくて、むしろそういう人間は少なめ。陰で人を支えたような人に光を当てていた所は好きだったな」
G「例えば、どんな人の事を描いてたんですか」
ご「無名の人だと、名物車掌さんとかシャボン玉飛ばしの人とか、個人タクシーの運ちゃんとか、とにかく色々だな」
G「有名人は無かったんですか」
ご「当時、月刊ジャンプでは”ほんまにアホかいな”という、藤山寛美の伝記漫画が有ったんだよ。だから被るっていう判断だったのかな。あまり有名人は無かったね。
ただ、たまには有って、覚えているのだとオール阪神巨人、将棋の中原誠、それから変わったとこだと徳田虎雄なんてのも有ったな」
G「ひぇ~。汚職まみれの徳田さんが偉人として伝記漫画を描かれていたんですか」
ご「徳州会の元となる、最初の病院を作る時に、自分の命、生命保険を抵当にしたっていう話だったけど、あれも嘘っぽいな(笑)。
でも、医療が進んでなかった所に病院を建てていったのは本当なんだろうし、だからこそ地元の支持は厚いんだろうし、偉人ではあるだろ」
G「はあはあ。中原誠さんも、今となっては微妙ですね(苦笑)」
ご「その頃は棋界の太陽だったんだよ!(笑)」
G「阪神巨人さんが扱われたのは、ちょっと理解されづらいかもしれませんね」
ご「当時はまだMANZAIブームの前で、たけしだの紳助だのが出てくる前だから。若手のしゃべくり漫才で注目を浴びてた頃よ。ただ、描いてあった事はいま見ると嘘ばかりだけどな(笑)。多分、本人たちに取材をしていたかどうかも怪しい(苦笑)」
G「単行本で全7巻ですか。月刊連載とすると、結構な長期連載ですね」
ご「5~6年続いたんじゃないかな。単行本は”傑作選”と銘打っている通り、収録されてない話も有るし」
G「それだけ地味な人気が有ったんでしょうかね」
ご「かもな。あの頃の月刊ジャンプも、なかなか面白かったよ。『キャプテン』を筆頭に、『けっこう仮面』『わが輩はノラ公』『硬派銀次郎』『どぐされ球団』なんてとこが載ってて。
週刊の方は毎号毎号、部数新記録を更新し続けて、集英社、ジャンプのイケイケの頃だな。週刊と合わせて漫画月刊誌まで勢いが有ったなんて、今は昔の話だ」