挿しす世相史『朝日新聞一千万円懸賞小説「氷点」(三浦綾子)に決定』
昭和39年7月10日(金)発売の朝日新聞紙上にて、前年に一年間募集していた懸賞小説の受賞作を発表し、北海道・旭川の雑貨店の主婦である三浦綾子の『氷点』が見事に受賞しました。
この懸賞金は、一千万円という巨額なもので、故に相当の話題となっていたものですが、それを受賞したのが主婦という事で、三浦は一躍シンデレラ然とした存在となり、話題性が増しました。
『氷点』は同年12月より朝日新聞紙上で連載され、翌昭和40年11月に連載終了してすぐに単行本化されます。
連載当時から朝日新聞の部数が伸びたという話も有りますが、単行本は絵に描いたようなベストセラーとなりました。
年が明けた昭和41年1月からは、新珠三千代と新人の内藤洋子によるテレビドラマがNET(現テレビ朝日)系で放送されます。こちらも22時台という、当時としてはかなり遅い時間帯でありながら、視聴率20%を超える人気を誇り、最終回は驚愕の40%を超えたとされ、主婦層に絶大な注目を浴びました。
三浦夫妻の婦唱夫随の作家活動ぶりや、敬虔なクリスチャンとしての面も喧伝され、その宗教的素養が脈々と流れる小説である事も話題となっていました。
三浦綾子はその後、本格的な職業作家として幾多の作品を残し、『氷点』も人気に応えて続編が執筆されました。
*1:昭和40年11月16日付読売新聞