無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

漫画投句「うわさの姫子」(藤原栄子)


 

 本当なら今回は、喧嘩漫画の系譜最終回を書くつもりだったのだが、小林よしのりの生放送を見ていたら時間が無くなってしまった。

 中で彼が新作『おぼっちゃまくん』の宣伝をしていたが、あれは茶魔語というのを小学生読者から集めて、一体感を持たせたのが大きな成功要因だったろう。

 彼の出身雑誌である少年ジャンプで『キン肉マン』が、超人デザインを読者から募集して盛り上げたのを上手く取り入れていた。

 

 さて、そのように(低年齢層の)読者から発想を募集して、それを漫画で実際に描いて一体感を持たせ盛り上げるという手法は、一体、何が元祖だったのだろう。

 こういう観点で追求した研究って、有るのだろうか。

 一回こっきりとかの発表という形だと、何が最初だったかを特定するのはかなり難しそうだが、恒常的にそういう事をやって人気を盛り上げた最初は、ワタクシが今思いつく限りでは、藤原栄子の『うわさの姫子』が最初だったような気がする。

 

 これは小学館の学習雑誌に掲載されていて、ウィキペディアによると元祖の題名は『飛び出せ!姫子』だったようだ。

 ワタクシはその題そのものは忘れていたが、改題して『うわさの姫子』になったのはよく覚えている。

 基本、少女向けの漫画だから特に面白いとは思わなかったが、なにしろ『ドラえもん』とか『いなかっぺ大将』などを超絶例外とすれば、ああした学習雑誌に載るのは、直截に言えばロクなものではなかった。

 

 ま、それは低学年向けの場合で、流石に五年六年という高学年向けになると、少しは漫画らしいものとなってくるのだが。

 『姫子』も、小学五年生に連載されたから、そこそこの漫画ではあった。

 内容はと言うと、姫子(ひめこ)を中心とする女生徒と、真樹(まさき)を中心とする男生徒のイザコザを描いたもので、実際の学校生活でもよく男子と女子はくだらない言い合いとかをする年代だから、わりと身近に感じる漫画ではあった。

 そして、姫子と真樹が最終回(つまり3月号)に向けて、お互い好きになるかというのも、予定調和的な愉しみ方だった。

 

 この漫画のいつ頃から始まった企画かは覚えていないのだが、各回での姫子の初登場の時に、その回の姫子の服装は「どこそこの誰それのデザイン」と表示するようになった。

 それが本当の事なのか、そして、実際の子供読者のデザインをどの程度まで取り入れているのかなどは知る由も無く、ひねたワタクシは、本当に読者投稿なのかなと訝しがっていた。

 そのうちに、男の真樹の方も読者デザインの服を着て登場するようになる。

 姫子の服のデザインはほとんど女子だったかと思うが、真樹の方は男子がデザインする場合も有った。

 

 こうした企画が功を奏したのか、『ドラえもん』と共に小学館学習雑誌の花形漫画となり、かなり長く続いたのは知っていたが、いま検索して単行本が30巻とかなっているのには魂消た。

 いかに複数学年で掲載されていたとは言え、あの手の雑誌に載ったストーリー系の漫画としては、正に空前にして絶後の記録だろう。なにしろ毎年毎年、3月には読者層が分断されてしまう宿命なのだから。

 昭和三十年代生まれのワタクシの世代から誕生した姫子は、それでも二十年近くも連載が続き、昭和50年代生まれの人間にまで親しまれていたのだった。