無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

昭和26年4月17日(火) ダレス特使による相互防衛声明

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旧敵ダグラス・マッカーサー解任を嘆いた日本人

 昭和26年4月11日に、マッカーサー元帥が連合国軍最高司令官トルーマン大統領に電撃解任され、16日に離日しました。この時、非常に多くの日本人がほんの数年前までの敵将に対し、惜別の意を表したものでした。

 とにかく戦中に日本軍の締め付けが厳しすぎ、その反動で「自由」「民主主義」に大いに感動したのでしょう。

 しかも、途中で転換するとは言え財閥解体に着手したり、農地を開放するという、所謂民衆を狂喜させる政策が執られていたのですから、国民的人気も宜というものでした。

 近年、アメリカが日本統治の大成功の夢を追いかけて、中東も意のままにしようとして大失敗したのは、この時の成功要因の分析を誤っていたのでしょう。

 ワタクシが考えますに、この時の成功要因は次のようなものです。

  • 日本は元々、高度に成熟した社会形態を自分達で形成していた。
  • 所謂民主主義にしても、明治期に自分達で築いていた。
  • 天皇という、政治を超えた国家の中心が存在していた。
  • 農地解放政策で多数の下層農民に実利を与えた。

 これらの何れも、中東には当て嵌まらないのだろうと思います。

 もし、中東の多くの民に石油利権を適切に分配できていたなら、あそこまでの混乱には陥らなかったのではないでしょうか。

 

当初計画では双務的だった日米安保

 マッカーサーの後任にはリッジウェイが据えられましたが、この名を知る人はマッカーサーに比してかなり少ないものと思われます。

 帰国の途に就いたマッカーサーと入れ替わりに来日したのはリッジウェイのみならず、ジョン・フォスター・ダレスがおりました。

 そのダレス特使が、昭和26年4月17日に、声明を発表しました。読売新聞の解説は、これを次のように分析しております。

  1. 今回の訪問はリッジウェイ新最高司令官ならびに日本の首脳者と会談して、さる二月の訪日以来の、対日講話に関する進展を検討すると同時に、『自己を守る防衛力はまた他をも守ることになる』とのアメリカの提案のもとに平和と正義の偉大なる目標に到達するための将来の計画を討議する。
  2. アメリカの対日政策は現在将来を通じ変化はない旨を強調したがこれは対日講和条約問題からさらに進んで日米双務防衛協定をも特使が日本側と討議することを示唆する。

  前年6月に火蓋を切った朝鮮戦争は、アメリカの対日政策にも非常に大きな変動をもたらしました。

 まず警察予備隊を組織させた訳ですが、憲法で縛った日本の軍備を、なんとか再構築させようと画策していたという事でしょう。

 これが自衛隊創設の根本です。1をもっと直接的に書くと、「日本の防衛力はアメリカの防衛力でもある」という事です。

 アメリカとしては、ソ連、そして中国との全面衝突は避けたいので、その前哨部隊として日本人を用いたかったのでしょう。

 しかし、この目論見は、自らが日本に課した「日本国憲法」により頓挫しました。

 そして今日的に見て意外なのは、2です。

 日米安全保障条約は片務的、つまりアメリカは日本を守るが、日本は憲法の制約が有るのでアメリカを守る事は出来ないというもの、少なくともそのような解釈で昭和時代は通されてきていました。

 しかし、条約締結前の段階では、双務的、即ち日本もアメリカを軍事力によって守るという内容で検討されていたのでした。

 

そして現在

 この検討が反故にされた理由としましては、憲法の制約、日本人の厭戦が有りましょうが、恐らく最も大きく作用したのは、当のアメリカ側の恐怖心、即ち日本の再軍備は危険であるという観点によるのだとワタクシは判断しています。

 それははるか現在までも続いており、トランプが日本の核軍備を認めるような発言をしたら、アッと言う間に大統領選の潮目が変わり始めました。

 一方、今の日本は、改憲して双務条約に改めるという正道を貫かず、安倍政権によって更に一段と歪んだ政体となってしまいました。