無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(50)

天才バカボン

 赤塚不二夫の代表作である作品ですが、この最初のテレビ化では提供会社である大塚グループの意向が強く働き、遊び人であるはずのパパが植木屋になっていたりと、原作世界とは少しだけ違っていました。

 赤塚はそれが不服だったようですが、この4年後に日本テレビで制作された『元祖天才バカボン』は、わざわざ「元祖」と付けただけあって本来の姿に近い形でテレビ化されています。

 

 こちらの方は、同じ系列でも関西・読売テレビの制作で、三年半ものあいだ社会的にウケた『巨人の星』の後番組でした。同じ週刊少年マガジンの顔である作品とは言え、随分と路線をガラリと変えたものです。

 それが災いしたのか、はたまた提供会社のいらぬ介入が災いしたのか、この最初のテレビ化では視聴率が伸びず、2クールで終了となりました。

 しかし、関東地方では夕方の再放送の度に20%を超える高い視聴率を獲得し、先の『元祖』制作へと繋がる事となります。

 

 音盤としましては、テイチクがユニオンレーベルで発売しました。

 これまで全くテレビまんが音盤と関わりがなかったに等しいテイチクが、何故いきなり主題歌を獲得できたのかはわかりません。

 『いじわるばあさん』でのフィリップス起用と併せて考えると、読売テレビの担当者が、敢えて従来のテレビまんがとは違う路線を求めたのかという気もします。

 

 或いは単純に、歌唱のアイドル・フォーがテイチク専属だったという事なのかもしれません。

 アイドル・フォーは、当時としては珍しい、コミックソングを吹き込んでいる実力の有る4人グループでした。

 また、朝日ソノラマが従来のソノシートで発売しています。

 

 

ふしぎなメルモ

 娘を遺して交通事故で死んだ母親が、天国の神様の計らいで、娘にふしぎなキャンディーを授けるという、手塚治虫による漫画が元となった作品です。

 赤いキャンディーを食べると若返り、青いキャンディーを食べると年を取るというのが基本的な用法で、その他にも、赤と青を幾つか同時に食べる事に拠り、人間以外の生物になれたりもしました。

 ”メタモルフォーゼ”が語源ですが、元々の題名は”ママァちゃん”として、小学館の学習雑誌などに掲載されていたものです。

 

 この当時、手塚治虫が雑誌でも展開していた”性教育”を扱った作品の一つで、テレビまんがとしては、この手のものはこれ一つだったでしょうか。

 時代背景としましては、永井豪の『ハレンチ学園』が世間から糾弾されたものの、エッチまんがは大当たりするという事が判明し、その軟着陸地点として性教育ものが出て来たのでしょう。また、”進歩的知識人”が北欧などを形だけ真似て、性教育を肯定的に扱う空気が有ったというのも有ります。

 テレビまんがの企画実現に、大人の視聴者も考慮するという目線が、この作品にも感じられます。

 

 音盤としましては、レコードのコロムビアとシートのソノラマという、いつもの体制でした。

 手塚作品ではありますが、この番組は虫プロではなく、虫プロの商業展開に嫌気の差した手塚が、虫プロから離れて独自に興した手塚プロダクションの作品です。

 制作会社は替わっても、音盤の付き合いはそのまま引き継がれたと考えて良いのでしょう。

 

 

さるとびエッちゃん

 『魔法のマコちゃん』に続くNET月曜19時の不思議少女枠で、石森章太郎による”おかしなおかしなおかしなあの子”をテレビ化したものです。

 但しエッちゃんは、過去作のような魔法を使う少女ではなく、”さるとび”の名の通り、忍者のような身体能力で活躍するものでした。

 

 ”ハッチ”以来の母恋路線迎合の空気に合わせるかのように、エッちゃんが”おっかあ”を恋しがる場面も挿入されていました。

 音盤としましては、これもレコードのコロムビアとシートのソノラマという組合せです。