無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(44)

ハクション大魔王

 タツノコプロお得意の独自ギャグ路線で、アラジンと魔法のランプを日本の庶民階層に翻案して、魔法使いをズッコケにしたものです。

 当初の終了主題歌が”アクビ娘の歌”で、大魔王の娘アクビちゃんが歌われている内容ですが、このアクビちゃんは回が進んでからの登場なので、最初の頃はこの歌と画面が非常に不思議だったものです。

 

 そしてアクビちゃんが活躍するようになってから、或る時いきなり、開始主題歌と終了主題歌とが入れ替わったのでした。

 提供は森永製菓で、ここから今にまで至るフジテレビ日曜18時枠の森永提供が始まるわけです(タツノコプロとフジ&森永の関係は『おらぁグズラだど』以来)。

 

 音盤としては、例によってのシート朝日ソノラマ、レコード日本コロムビアという体制でした。

 但し、他の番組でも多く見られていた、この盤石とも思える体制も、翌昭和45年に勢力図が変わる事となります。

 

 

ムーミン

 日本人にもとても有名で、解説の必要は無いと思われますが、最初のテレビ化は日本独自の内容で行われています。

 特に初期の東京ムービー制作の物は、演出(監督)の大隅正秋を筆頭に、脚本の山元護久井上ひさしといった人々の舵取りにより、浪漫あふれる非常に魅力的な話が描かれ、日本での人気を根付かせました。

 

 しかし、その内容があまりに日本独自であり、特にお金や暴力描写などに原作のトーベ・ヤンソンが難色を示したため、26回で東京ムービー制作は打ち切られ、27回目から虫プロに制作が移行するという、非常に珍しい形となりました。

 日曜19時半は『サインはV』が社会的な人気を呼ぶなど、TBSの不二家枠が強かったので、視聴率は2桁がやっとでしたが、視聴者の反応に提供のカルピスとしても納得できたのでしょう。1年以上も続くうちに評判も鰻登りとなっていきました。

 

 主題歌を歌っていたのは藤田とし子ですが、丁度この時期、藤田は新興のCBSソニーの専属となっていたようで、それがレコード展開で異常な様相を作り出す事となりました。

 母親受けの良いこの番組の盤は、出せば大いに売れたと見えて、レコードはCBSソニーの他にコロムビア東芝、ビクター、更にそれまでのシート組だったエルムや勁文社までが、売り上げの落ちてきたシートからレコードに宗旨替えして参戦しました。

 

 レコードでは新興の勁文社は、シングルレコードと同サイズの厚手ミニパネルをオマケに付け、「パネルレコード」として売り出していました。

  ソノラマはまだシートで頑張って、この番組は流石に売れ行きが良かったと見えて2種出しておりますが、後には、このムーミンもレコードで発売するようになりました。

 

 どの盤も大いに売れたようですが、中でもビクターは気を吐き、都合5枚も関係無い歌を作ってはムーミンと名付けて売り出し、他にクリスマス盤やひな祭り盤まで出して、商魂たくましく売り出しました。

 こうして、多数の社が多くの枚数を売り上げたためでしょう、昭和45年の第12回レコード大賞童謡賞を、ムーミンの歌が受賞する事となりました。

 ところが、テレビで歌っていた藤田とし子のCBSソニーは新興のため、販売力が弱かったので、老舗レコード会社に販売数でははるかに及ばなかったと思われます。

 

 そして藤田は専属だったため、それら大多数の盤は、テレビとは違う、レコード会社独自の歌手によるカバー盤だったのでした。

 中で最も販売数が多かったのか、受賞したのはビクター盤の玉川さき子という少女歌手でした。

 テレビまんがとして最初に受賞した『オバQ音頭』でも、本来の制作社である朝日ソノラマではなく、カバー盤と言えるコロムビアが受賞したという知られざる悲劇が有りましたが、そうした構図が再び起きたわけです。

 テレビから聞こえる歌声の藤田とし子を差し置いて、子供のカバー歌手が受賞してしまうという後味の悪い結果となりました。

 

 

アタックNo.1

 『巨人の星』や『サインはV』『柔道一直線』などが大いに受け、世にスポ根ブームという様相が現れました。

 お家芸と言えるくらいに日本が強かった、当時のバレーボール人気も今では考えられないくらいに高く、『巨人の星』で大当たりした大塚製薬の大塚グループが、フジテレビ日曜19時にもスポ根まんがを打ち出しました。

 

 真裏のTBSは、『月光仮面』の昔から武田薬品が君臨していた枠であり、この当時は『柔道一直線』が、やはり大人気を呼んでいました。

 製薬会社によるスポ根対決は、最初は先行の『柔道』に些か分は有ったものの、『アタック』も非常に善戦し、武田枠が凋落していく契機となりました。

 

 『スポ根物』は人気を呼ぶと、親・大人世代にまで認知が広がるため、音盤も非常に売れ行きが良くなったようです。

 この『アタックNo.1』もそうした番組で、音盤としてはソノラマがシートを二種、レコードはビクター、コロムビア東芝、キングに、更にここでもエルムと勁文社が参戦しています。勁文社はパネルレコードです。

 

 主人公の鮎原こずえの声を、ビクター専属歌手だった小鳩くるみが演じており、そのためか、テレビ主題歌の初期の歌声も小鳩のものでした。

 第6回からは、よく知られる大杉久美子歌唱の開始主題歌となり、終了主題歌は、一貫して伊集加代子の歌うものでした。

 つまり、開始主題歌には2種あり、初期の小鳩くるみ版はビクター盤でしか聞けないわけです。

 その他の盤は、全て大杉久美子で収録されています。