朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(43)
男一匹ガキ大将
本宮ひろ志が週刊少年ジャンプの人気を押し上げた喧嘩漫画で、日本中の荒くれどもを糾合する男一匹・戸川万吉を描いたものです。
テレビまんが化に当たっては、長期連載の原作設定をそのまま用いる事をせず、かなり弄られた内容となっています。
『夕やけ番長』の後番組で、やはり月~土の18時35分から10分間、一週間全6回で一話完結という放送形態でした。
従って前番組と同様にスポット枠で、提供会社は有りませんでしたので、開始主題歌が終わると、すぐCMに入っていました。
主題歌を歌ったのは声楽家の宍倉正信で、専属ではなかったと思われますが、東芝から主題歌レコードが出されました。
東芝はこの頃、テレビまんが主題歌にかなり精力的で、この主題歌もレコードは東芝からしか音盤化されていません。
しかし、できる限りの全テレビまんがを制覇しようという不文律すら感じる朝日ソノラマは、この番組もシート化しました。
タイガーマスク
日本テレビ系の関西局、読売テレビは、音盤化契約に関して、当初は垣根を設けていなかったものと思われます。
日本テレビの方は、先の『男一匹ガキ大将』を始め、特定のレコード会社、シート出版社との独占というのが基本だったようです。
読売テレビ制作の、この『タイガーマスク』は、そんな訳で非常に数多くの盤が出されました。
レコードは、コロムビア、キング、テイチク、ビクター、東芝と、有力五社の全てから、シートは朝日ソノラマから2種出されましたが、どれも大いに売れました。
『巨人の星』と併せて、梶原一騎原作によるスポ根路線は、音盤界も大いに潤わせたのです。
この頃、シートが段々と売れなくなり、反面、レコード勢の威勢が上がってきたという時勢柄、それまでシートで音盤化していたエルムが、ここからレコードで販売するようになりました。
エルムも複数種を出しており、本当にまんべんなく売れていた事が伺えます。
また、ソノラマも最初の盤を少し後に「ソノラマレコード」として発売し直しました。シート路線からレコード路線に替えようか迷ったかの時期に、取り敢えず売り上げが良かったものの再販ものを幾つかレコードとして出していますが、その最初でしょう。
サザエさん
今に至るまで、50年近くも放送され続けている驚異の長寿まんがで、開始主題歌も終了主題歌も、一貫して変わっていません。
『カムイ外伝』の後番組で、東芝の提供もそのままであり、故に音盤も全て東芝から出ています。
放送開始当初は、東芝独自の「赤盤」と呼ばれる赤色音盤で、ジャケットもペラ紙でしたが、東芝がその後、赤盤を廃止し、普通の黒色音盤となりました。また、ジャケットも結構な厚紙と替わっています。
他に、提供の東芝が独自に配布した非売盤も存在しています。
また、放送が進むうちに挿入歌として「レッツ・ゴー・サザエさん」「カツオくん(星を見上げて)」の二曲が作られ、積極的に番組中で使われましたが、これも東芝から音盤化されました。
テレビまんがの劇中挿入歌が単独で一枚の音盤として発売されたのは、これが最初でしょう。
レコードの本格普及時代を迎え、いよいよテレビまんが音盤が様々な形で発売されていく事となります。