無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(33)

マッハGoGoGo *1

 テレビではボーカル・ショップ歌唱による疾走感あふれる歌がOPで流され、冒頭からワクワクさせられたものです。

 テレビと同じ歌手に拘る朝日ソノラマが、このボーカル・ショップ版でシートを出し、勁文社は上高田少年合唱団、コダマプレスはザ・エスカイヤーズという正体不明の歌い手で、それぞれシート音盤化しています。

 レコードは、ソノラマと共にもう全テレビまんがの音盤化に走り出したようなコロムビアが出しましたが、歌手は独自の高橋元太郎でした。

 

 高橋は昭和30年代にスリー・ファンキーズの中心歌手として、元祖男性アイドルとして活躍の後の、この路線です。そして、更に数年後、ドラマ『水戸黄門』で、うっかり八兵衛として長年親しまれた事は、ご記憶の方も多いでしょう。

 コロムビアは同じ高橋歌唱でコロ・シートも出しています。

 結局、テレビのボーカル・ショップ歌唱が楽しめるのはソノシートだけで、ソノラマの完全独占という形は激減しましたが、それでも様々な形でソノラマの優位性は、まだ抜きん出ていました。

 

リボンの騎士

 『リボンの騎士』は手塚治虫作品で、もちろん虫プロ制作でしたから、ソノラマの橋本一郎が手掛けました。

 虫プロから富田勲の起用を打診された橋本は、『ジャングル大帝』での印象がどうしても残っていたため、また歌えない歌を作られてしまうという警戒から、かなり強く難色を示したようです。

 しかし、恐らく手塚御大の意向なのでしょうが、虫プロ側が富田勲起用で押し切りました。そして出来上がった主題歌を聞いた橋本は、自らの不明を大いに反省したといいます。*2

 

 しかし、『リボンの騎士』は低視聴率で、提供会社が1クールで撤退してしまいました。番組は存続の危機に立たされましたが、なんとか局を説得して、時間帯を変更しての継続となります。

 橋本は、少しでも番組の宣伝になるならと、敢えて低視聴率のこの番組の音盤第二弾を出しました。「ウルトラブックス」と言われる、マニア垂涎の極稀少ソノシートブックの一作です。

 しかし、やはり番組人気は向上が見込めなかったようです。

 また、この番組もソノラマよりやや遅れてですが、コロムビアがレコードで発売しました。

 

冒険ガボテン島

 TCJ(現エイケン)制作ですが、TBS放送という事で、独自路線かつ音盤は申し込み各社がどれも出せるという事で、これも数多くの盤が出されています。

 シートは、朝日ソノラマ、コダマプレス、勁文社が2種、ふらんす書房のミュージックグラフが大小2種。

 レコードは、コロムビア、ポリドール、東芝、テイチク、キング。更にクラウンもキャプテンウルトラとの抱き合わせですが出しています。

 そしてビクターが、恒例のミュージックブックによるシートに加え、「ハイカラーレコード」と称した、美麗なカラー絵盤面のレコードも発売しました。

 

 ついに7大レコード会社が、テレビまんが音盤に揃い踏みしたのです。

 のみならず、レコード針で有名なナガオカも加わってきました。

 ナガオカは、『ウルトラマン』や『快獣ブースカ』など、音盤化の障害が無いような音源のみで、この頃に幾つか子供番組のレコードを出しましたが、結果はあまり芳しくなかったのか、一時的なものでした。

 子供番組の音盤は金になるという認識が共通となり、凄まじい争奪戦の様相を呈し始めていました。

 

 「独占男」の異名を取った朝日ソノプレスの橋本への工作も相当だったらしく、額面未記入の小切手を提示された事も有ったようですが、彼は決してその手の誘惑には乗らなかったと回想しています。

 しかし先日のインタビューに拠れば、どうも彼のすぐ上の上司は、もしかしたら乗ってしまった可能性が有るそうです(笑)。

 その辺の話は、少し前に書きましたように、別ブログの昭和テレビ探偵団の方で、いずれご報告致します。

 そちらの記事化が遅れておりまして、当の橋本一郎様はじめ、皆様にお詫び申し上げます。

*1:「1960年代 懐かしの漫画ソノシート大百科」(レコード探偵団)

*2:鉄腕アトムの歌が聞こえる」橋本一郎少年画報社