無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(30)

 先日、本連載の主たるネタ本の著者である橋本一郎氏に直接お話を伺う機会を得たのですが、かなりの長時間、それも細々した話まで全く厭わずに快くお答えを頂けて、非常に有り難い事でした

 その記事は、もう少ししてから拙作ブログの一つであります『昭和テレビ探偵団』の方で公開致しますので、興味のございます方はお気に止めていて下さい。

 ソノシートの一作一作について出来ればお話を伺いたいと思っていたものの、あまり細かい話を続けてもご迷惑で嫌がられるかなとも思い、適当な数で切り上げようとしていたのですが、北関東から出向いた当方のために、この機会になるべく多くの事に答えて下さろうというご厚遇を戴きまして、かなり細かく確認させて戴く事ができました(勿論、ご記憶でない事も多かったです)。

 橋本氏には、ここでも改めまして深くお礼を申し上げます。

 

 しかし、そのように様子を伺いながら断続的に確認を進めていたために、『とびだせ!バッチリ』については聞き逃してしまいました。

 これは日本テレビ夕方の6時35分から毎日10分ずつ放送されていた、一週6話完結のテレビまんがで、『戦え!オスパー』と同じく日本放送映画が制作しました。

 『オスパー』は日本クラウン専属の山田太郎が歌唱を担当したために、他社は専属歌手の壁に阻まれ、さしものソノラマもテレビと同じ歌手を使用する事は出来ませんでした。

 

 ところで、『オスパー』に関して書きました際に、歌謡曲畑の人間ばかりが集まったクラウンが、なぜ早々にテレビまんがの主題歌を担当する事となったのかが謎と書きましたが、橋本氏から伺った話の中に、非常に興味深い事が有りました。

 なんと、「艶歌の竜」こと馬渕玄三が朝日ソノプレスに日参して、ソノラマの独占をなんとか切り崩そうとしていたというのです。

 その辺の話は上記サイトでの記事公開をお待ち戴く事としまして、どうやら発足間も無い日本クラウンは、不慣れなテレビまんがの音盤すらも当座の資金稼ぎとして焦点を当てていたという事になります。

 謎の一つが解けたような思いでした。

 

 この『バッチリ』は、短い帯マンガという事で、あまり注目されなかったかと思いますが、可能な限り全てのテレビまんがを音盤化するという不文律が有ったかの如き朝日ソノプレスは、このような番組もソノシート化しました。

 他に、ソノラマの初期の宿敵とも呼ぶべきビクターもシートで出しております。

 ここでも多々資料として使わせて戴いている、レコード探偵団による労作、『1960年代 漫画ソノシート大百科』には、他にコダマプレスによるシート音盤のみが掲載され、主題歌3番までと「ミスターチャックの巻」「びっくり大仏の巻」が収録されている事までは判っていますが、その他の情報は一切不明となっています。

 これだけ商品が出て来ないという事は、市場で発売されずに終わった可能性が高そうです。恐らく、あまり販売数が見込めないという事で、お蔵入りになってしまったのではないでしょうか。

 

 そして昭和41年の12月になると、初の少女向けテレビまんがである『魔法使いサリー』が始まります。

 『レインボー戦隊ロビン』で既にソノラマ独占が崩されていたので、この作品もソノラマ以外の複数社により音盤化されました。

 ところが面白い事に、『ロビン』を出した各社は本作についてコロムビア以外は手を出しておらず、『ロビン』は出していなかった勁文社がシートを出しています。

 テレビ版と同じ歌手(スリー・グレイセス)で音盤化されていますが、どのような事情でこれが実現されたのかは謎です。ただ、橋本氏の証言では、この頃、彼の上司がかなり各社から口説かれてはいたようなので、その辺の事情なのかもしれません。

 コロムビアはダイヤモンド・シスターズというグループを用い、独自音源でレコードとして発売しました。この少し前まで、スリー・グレイセスと言えばコロムビアの音盤という感じだったのですが、この時には関係が切れていたとしか思えません。

 

 『サリー』は開始主題歌は最初から最後まで同じ歌でしたが、終了主題歌が全部で3曲作られました。

 2曲目の『いたずらのうた』、3曲目の『パパパのチョイナ』については、コロムビアがLPで収録したものの、シングルでの音盤化はソノラマの独占となっていました。

 この構図は『レインボー戦隊ロビン』と同じであり、ソノラマとの独占契約を反故にした東映側も、独占解除の最初のうちはそれなりにソノラマに配慮していたのではないかと思われます。