朝日ソノラマはなぜ鉄腕アトム主題歌を独占できたのか(29)
『ジャングル大帝 進めレオ!』は、『ジャングル大帝』の第二部がそのまま続いたと言えるもので、レオが成長し、その子のルネとルッキオが登場するものでした。
主題歌にはハッピー・ビーンズが歌う歌が使われましたが、これは『ジャングル大帝』の時に書きましたように、そもそもは『ジャングル大帝』の第一CMの時間に、デューク・エイセスの歌唱で流されていたものです。
ただ、それは普通に見たらCMというものではなく、いかにもジャングル大帝主題歌のように流されていました。
とてもジャングルとは見えない、まるで砂漠のように殺風景な背景に歌が流れ、画面はただただ歌詞が流れていくだけなのです。
最後は ♪ サンヨー サンヨー サンヨー電気 と歌が締められ、提供会社である三洋電気の名が映し出され終わってました。
『ジャングル大帝』の主題歌は、ハミングだけだったり、音楽だけだったり、仮に歌が乗っていても声楽家による歌唱で、とても子供たちに親しみ易いとは言えないものでした。
これに危機感を持ったであろう提供側が、三木鶏郎に依頼して独自に如何にもテレビまんが主題歌らしいジャングル大帝の歌を作成して、本来の主題歌の後に続けて1分かけてこの歌を流していたのでした。
ですから当時の子供は、どちらが本当のジャングル大帝の歌なのか少々混乱気味だったようです。
第二部展開とも呼ぶべき『進めレオ!』では、歌手を女声のハッピー・ビーンズに替えて、とうとうこのサンヨーの用意した歌が主題歌に昇格しました。
ハッピー・ビーンズとは、由紀さおり・安田祥子姉妹の事だとされています。
これでは元主題歌の富田勲の顔が潰れてしまいますので、サンヨーの歌に荘厳な、いかにも大河ドラマらしいイントロを富田勲が付けて編曲したものが、新たな主題歌となりました。
『ジャングル大帝』の音盤については以前に書きましたが、この新主題歌は朝日ソノラマのみが音盤発売しました。
元主題歌を制作したコロムビアは、何故かこの時には音盤化していないのです。
CMソング扱いの時に三洋電気が販拡景品としてソノシートを作成しており、そちらは朝日ソノラマが制作を請け負ったのでしょうから、原盤権は既にソノラマの手中に有ったという事なのでしょう。
その辺で、コロムビアも音盤化意欲が無かったのかもしれません。
『がんばれ!マリンキッド』は、放送時の主題歌がどのようなものだったのか判然としません。
一応、音盤としましては、シートが朝日ソノラマからボニー・ジャックスの歌唱で、ビクターからトニーズ歌唱で出されました。
他にレコードでも、ビクターが同じ歌手でステレオで出していますが、キングレコードからも放送開始数ヶ月前に「マリンキッドの歌」なる正体不明の歌がレコード発売されています。
ウィキペディア始め幾つかのサイトで、これを初期主題歌として扱っていますが、あの当時に全13回放送のうちで主題歌変更が有ったと考えるのは、あまりに無理筋です。
ビクターのレコードジャケットには「サウンド・トラックより」とわざわざ書かれていますので、『がんばれ!マリンキッド』の主題歌がそちらである事はほぼ間違い無く、歌手もトニーズであった可能性が高そうです。
では、それより数ヶ月早く「マリンキッド主題歌」としてキングから発売された、「マリンキッドの歌」は、どのようなものだったのでしょうか。
その正体も現在の所は不明としか言いようが有りません。
しかし一つの仮説として、前年にわずか全3回しか放送されなかった『ドルフィン王子』が「マリンキッド」と改題されて新たに放送される事になったという話がキングに入り、『ドルフィン王子』の時に使用されていた主題歌を音盤化してしまったという事も考えられます。
もしそうであれば、アニメ史の大きな謎の一つである『ドルフィン王子』主題歌が判明する事になるのですが。
とにかく、『ドルフィン王子』『がんばれ!マリンキッド』の二作品は、そのフィルムが恐らく後の『海底少年マリン』に作り替えられた可能性が高いため、いまだにフィルムの有無もわからず仕舞いであり、全貌を掴みづらい作品となっています。
*1:ジャングル大帝 進めレオ! DVD-BOX(コロムビアミュージックエンタテインメント)