昭和唱和ショー「雨戸」
Gさん(仮名)「梅雨に相応しい題材ですけど、雨戸は今でも有るんじゃないですか?」
ごいんきょ「でも、減ってきてるだろ。うちみたいなマンションだと無いし。それに有っても、昔のような木製じゃないだろ」
G「それはそうですね。いまどき木製の雨戸じゃ需要は無いでしょう」
ご「わしの中での雨戸というのは、木製の戸袋があって、下に戸車も付いて無くて、ガタガタさせながら開け閉めする木製の引き戸なんだよ」
G「今回の画像は小さくて、知らない人には何が何だかわからないでしょうね(苦笑)」
ご「一応解説すると、上半分くらいの左側が戸袋。戸袋って言葉もわからない人が増えたかな。雨戸を収納する部分だな。
で、右側が普通のガラス戸だ。真ん中ほどは縁と呼ばれる部分だな。そしてその下が、縁の下だ」
G「最近の家は縁の下も無くなってますよね」
ご「田舎ではまだまだ見るがな。猫のお気に入りの場所だ(笑)。
で、敷石が有って、その上に雪駄かが置いてある絵だな」
G「なんか、昭和語がいっぱい出て来た感じですね(苦笑)。今の説明、初めて聞く言葉が多い人も結構いるかもしれません」
ご「縁の下の力持ちって言葉も使わなくなったかな。どんどんアメリカ化しているし、俺が俺がっていう人も増えたかもしれないしな」
G「これは雨戸が描かれていないですね」
ご「戸袋に入った状態だな。昼間。昼間はこのように、ガラス戸で外界と仕切っている。そして夜になると戸締まりとして雨戸を閉めて、外界と遮断される感じだな。朝になっても雨戸を開けないと、陽光が充分に入って来ない」
G「昔の日本家屋はカーテンなんて使ってませんでしたからね」
ご「ああ。だから雨戸は、陽光を遮断するという目的も有った。寝る時になるべく暗くするという役割だな」
G「でも、”雨戸”っていう名前なんですから(笑)」
ご「そうそう。雨風を凌ぐという役割が一番大きかったのかな。でも、雨風は毎日じゃないしな。夜は毎日締めていたから、戸締まり目的が実際には一番大きかったと思うが」
G「ガラス戸なんて、その気になれば簡単に破れますもんね」
ご「そうなんだよ。でも、雨戸だって昔はただの木製で、外からでも蹴破ろうと思えば簡単に出来そうな物でさ。わしは子供の頃は怖かったよ」
G「その頃、そんなに凶悪な犯罪は見聞きしなかったですけどね」
ご「でも、なんか不安だったんだな。親父も大して強そうじゃないし(笑)」
G「雨戸が頼りになったのは、風が強い日でしょうか」
ご「まあな。ガラス戸が風に揺らされるとガチャガチャと、割れるんじゃないかと怖くなるからな。でも、雨戸も強風だとガタガタうるさかったけど」
G「昔の漫画でよく有ったのが、台風の時に雨戸を釘で固定する描写ですね」
ご「サザエさんで言えば波平さんとかマスオさんが、カナヅチ持ってトンテンカントンテンカンと釘で補強の木材を打ち付けるという」
G「それで台風がそれたとか、自分が中に入れなくなったとか、そんなオチでした(笑)」
ご「しかし、我が家ではそんな事をしたことが無かったね」
G「あれって本当にやってたんでしょうか」
ご「ほら。昭和30年代は被害の大きい台風が幾つも来たのよ。伊勢湾台風だのなんだの。だから防災意識も高かったと思う。わしの少し年上の知り合いの家では、やっていたらしいぞ」
G「なるほど。で、昭和40年代も後半になってくると、そうした台風惨事の記憶も薄れたのか、そういう家が減ってくるんですね」
ご「住宅事情もかなり変わっていたろうし、なんと言っても関東は、台風がモロに上陸してくるって事は滅多に無いからね」
G「住宅事情が変わったと言えば、今の雨戸って、シャッター式が多いですよね」
ご「あれも雨戸って言うのかね。なんかヤクザの事務所かっていうくらい堅牢な作りの家を最近よく見るんだよ」
G「窓が無かったり人が入れないくらい小さかったり、格子が有ったりね(笑)。その上、窓にシャッターとか、玄関以外に人の出入りが出来なかったりとか、たしかにヤクザの事務所と共通点は多いですが(笑)」
ご「確かに外から入って来れないかもしれないが、中からも出られないって事だからな、それは。防災面での考慮がちゃんとされているのか、他人事ながら心配になるよ」
*1:昭和41年6月11日付読売新聞