無駄じゃ無駄じゃ(?)

すべては無駄なんじゃよ

漫画投句「がんぼ ナニワ悪道編 (7)」

 気がついたら、6巻、7巻がもう出ていたのだった。

 いつも忘れた頃に発売になるので、ふと気付くと2、3冊読んでいないなんて事が結構あるのよね。

 で、書店が完全パックをするようになってから、これ買ったっけ?っていうのが増えて、重複買いが増えてたのよね。

 電子書籍にするようになって、そういう事が完全に無くなったのは良かった。

 

 『がんぼ』は、『激昂がんぼ』までが最高の流れだった。あそこで大団円となっていれば、これはもう、本当の名作だったと言える。

 妖怪の如き正体不明な権力を持つフィクサー、ハタ所長を呑み込んでしまおうという発想に行った事にも驚いたが、ハタ所長の力の源がきちんと設定されていて、それを神崎が逆用してしまうあたり、見事な作劇だと唸ったものだ。

 

 転じて、今の『ナニワ悪道編』は、大阪ヤクザとの抗争が話の中心となってしまい、二宮との共闘が等閑になってしまうし、ヤクザの抗争の話は漫画でも珍しくないので、この漫画の良さがかなり減じられていると、ワタクシなどは思っている。

 ただ、筋の進め方には相変わらず独創的な部分が有り、加えて関西の事件屋連中は絡んでいるので、その辺りでこの漫画独自の面白さも健在である。

 

 中でも、関西最大の暴力団伝説の三代目実弟で、当代五代目の相談役という超大物事件屋・井手前を排除するのはかなり難儀するのではと思われたが、とうとうこの巻で、井手前との抗争が決着する。

 かなり無理筋な筋運びになってきたなと感じるが、あのくらい強引に進めないと、神崎を関西最大の実力者に持って行くのも難しいだろう。

 軽い違和感は有るものの、収められる程度のもので、後は今後の展開次第で気にならなくなるだろう。

 

 昭和も50年代前半あたりまでは、立身出世ものという作品が、ドラマや小説で大当たりできた。花登筐が代表作家だが、他にも数多い作品が発表されていたのだ。

 だが、とんとそういう作品を見なくなってしまったし、仮にそうしたものを発表したところで、受けないだろう。

 この社会がガチガチに構築されている現在、一介の若造が成り上がろうなんて夢物語は、もはや裏社会でしか描けなくなってしまったという事なのだろう。

 折しも実在の大手暴力団で分裂騒動が有り、その辺の世相を上手く取り込んでいるあたり流石ではある。 

がんぼ ナニワ悪道編(7) (イブニングKC)

がんぼ ナニワ悪道編(7) (イブニングKC)