漫画投句「1・2のアッホ!!」
ワタクシがこれまで読んできたギャグ漫画の中で、最もギャグが好きな漫画と言ったら、文句無くこの『1・2のアッホ!!』になる。
同じコンタロウによる次作『ルーズ!ルーズ!!』も好きだったが、流石にアレは内輪ギャグが強すぎて、この『アッホ』に比べればどうしても落ちてしまう。
最初の頃は、わりと大人しめの、低学年向けという感じだったのが、段々とキラリと光るものが出て来て、最後の方は、もう、あまりに程度が高すぎて、ジャンプ読者の方が付いていけなかったという事なのだと思う。
ジャンプはどんどん低年齢化させて行っていて、これだけのギャグ漫画を理解できる読者層ではなかったのだ。つくづく、惜しい漫画、漫画家の、相応しい発表の場が得られなかったと思う。
ギャグの内容が進化していく、その直中でありながら、わずか二年ほどで連載は終わってしまう。
特に凄かったのが、プロレスと野球に関するネタになった時で、まるで往時の日本テレビのような作家だった。
中でも最初に出張ったのが、陽打治(よう・うちはる)という、王貞治のパロディキャラを作り上げてからだろう。
主人公のカントクが、何故か陽選手の迷いを解き、老師として崇められてしまう。
そして弾みで試合に出るや、「一本足打法」ならぬ「一本出しアホウ」を披露するあたりから、どんどん弾みが付いていった。
絵が無くても説明できる駄洒落ネタを書いているが、こんなのは序の口で、コンタロウのギャグの本領には、読んでみないと触れる事は出来ない。
折角、バリバリにノッてきていたギャグ漫画だったのに、その力を存分に引き出せなかったのは、『ストップ!ひばりくん』もそうだった。
あの頃からジャンプは、幼稚な筋展開の漫画がはびこりだし、ギャグ漫画ではこれらのようなものが有ったのに、あたら、その存在を摩耗させるという罪を犯した。
『ひばりくん』『アッホ』を飼い殺してしまった当時の編集長は、ギャグ漫画もギャグ漫画家も、まるで解っていなかった。
コンタロウは、『ルーズ!ルーズ!!』での執拗な内輪ネタを後に反省し、『いっしょけんめいハジメくん』の中だったか、当時の作品を自己批判するような台詞が出て来て、少し悲しくなった。
内輪ネタが悪いのではなくて、まだ早過ぎただけだったのだ。ジャンプの読者の程度が低かったのである。
その証拠に、その『ハジメくん』から幾らも経たずに、とんねるずがテレビ界の内輪ネタを『オールナイトフジ』や『夕やけニャンニャン』で語りまくって、一気に頂点まで駆け上がっていった。
だが、ようやく時代が追いついてきた時には、既に駆け抜けてしまっていたコンタロウは、もう、かつてのようなノリの漫画を描けなくなってしまっていた。